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チョー・ヨンギ牧師と文鮮明先生 - 戦後韓国最大のリバイバリスト

◯徒然日誌(令和7年2月5日)  チョー・ヨンギ牧師と文鮮明先生 - 戦後韓国最大のリバイバリスト 

 

イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」(マルコ9.23)

 

プロローグ 

 

筆者は、本年1月5日、大川従道牧師が創立した日本最大級の教会「大和カルバリチャペル」の初詣礼拝に参加した。その大川牧師が最も敬愛し、師と仰ぐのが趙鏞基(チョー・ヨンギ)牧師である。大川牧師は、自らをチョー牧師の一番弟子と自称する。言うまでもなくチョー・ヨンギ牧師(1936年~2021年)は、信者80万人を擁し、単体の教会では世界最大の教会である「汝矣島(ヨイド)純福音教会」の創立者である。なお純福音はフル・ゴスペル (Full Gospel) の訳で、純福音教会は聖書の言葉をあるがまま受け入れるペンテコスト系の教会である。 

 

今回、筆者が何故チョー・ヨンギ牧師について論評しようと思ったのか、その理由が2つある。その一つは、チョー・ヨンギ牧師がどのようにして世界最大の教会を作り得たのか、その教会成長の背景や理念や方法を知りたいという欲求である。もう一つは、チョー・ヨンギ牧師に関して、文鮮明先生との対比の中で考えてみたいう動機である。両者とも、現代史において、韓国が生んだ最大の宗教指導者(リバイバリスト)であるからである。しかし、チョー牧師と文先生を同列で比較して論じるなどとは「不謹慎だ」というお叱りを受けるかも知れない。それは洗礼ヨハネとイエス・キリストを比較して論じることなど到底できないのと同じであるからである。

 

実は筆者はこの2人について、次の問題意識を持った。一つはチョー・ヨンギ牧師は文先生にかなり刺激を受け、特に日本や世界への宣教活動について影響を受けた(ないしはライバル視した)のではないかというい点である。今一つは、両者は、韓国が生んだ戦後最大のキリスト教宗教指導者であるが、宗教指導者としてどこが根本的に違うかといういう点について明確にすることである。 

 

以上のような問題意識を念頭において、チョー牧師の略歴、理念、業績、背景などについて、以下の通り考察するものである。 

 

【チョー・ヨンギ牧師の略歴と業績】 

 

チョー・ヨンギ牧師は、1936年2月、朝鮮半島慶尚南道にて、父チョー・ドゥジョン長老と母キム・ボクソン勧士の間に5男4女の長男として誕生した。文鮮明先生より16才下ということになる。 

 

漢学と伝統的な宗教文化になじんだ家庭で幼少期を過ごし、朝鮮戦争のために釜山で避難生活を余儀なくされた。厳しい貧困の中、釜山工業高校に入学し、学校に駐留していた米軍部隊で、校長と米軍部隊長との間の通訳を務めながら英語力を伸ばした。この点、文先生も朝鮮戦争の最中、北から釜山に避難し、弟子の金元弼(キム・ウォンピル)氏共々米軍関係で仕事をし、1951年、釜山のポムネッコルに小さな土塀の伝道所を開設した。 

 

<信仰体験と教会設立>

 

チョー牧師は、17歳のとき肺結核を患い、死線をさ迷ったが、姉の友人を通して福音に接し、奇跡的に癒されるという体験をした。この奇跡的体験はチョー牧師の「病気癒し」の原体験であり、また信仰の一丁目一番地である。チョー牧師は、説教の中で必ず病気の癒しの話をするが、それは17才の原体験からきていると思料する。その後、釜山で米国のペンテコステ派教団「アッセンブリーズ・オブ・ゴッド」のケネス・タイス宣教師に出会い、集会の通訳をする中で回心した。一方、文先生は15才でイエス・キリストから召命を受け(1935年4月17日)、原理解明の道をスタートした。 

 

1956年「純福音神学校」に入学(20才)、後の牧会同労者で義理の母となる崔子実(チェ・ジャシル)女史に出会い、神学校を卒業した1958年、チェ女史の自宅で、たった数人で創立礼拝を捧げた(22才)。なお、チョー牧師はチェ牧師の娘と結婚しており、チョー牧師にとって、チェ牧師との出会いは決定的な意味を持ったと言える。 

 

そしてチョー牧師の病気癒しの原体験はもう一つある。7年間全身麻痺で病んでいたムソンという子供の母親がいた。チョー牧師が11ヶ月間に渡り祈り続けた時のある夜、ムソンの母親は、自宅にいるはずのチョー牧師が母親の家の庭に来て祈っている幻と声を聞いた。その声で立ち上がると子供は癒されていたという。これにより、村の人たちがイエスを信じるようになり、村中の人々が出て来て祝福し、土地をチョー牧師に贈ったという。その後天幕礼拝を開始し、1961年には会堂が完成した(25才)。一方、文先生は、釜山で伝道を開始し、1954年、ソウルで世界基督統一神霊協会を設立されている(34才)。 

 

チョー牧師は、聖書の出エジプト18章のモーセのしゅうとの助言「すべての民のうちから、有能な人で、神を恐れる人を選び、それを民の上に立てて、千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長としなさい」(出エジプト18.21)を根拠に、区域組織を活性化し、これが教会成長の基盤となり、1968年には信徒数8000名に達した(32才)。1969年、ヨイドにて会堂建築に着工し、ついに1973年ヨイド会堂が完成した(37才)。この頃、文先生は、既に原理の解明を終え、原理原本、原理解説を世に出し、1958年に日本に、1959年にアメリカに宣教師を派遣している。また、1964年に日本の統一教会は宗教法人化され、1965年と1967年には日本を巡回された。また1971年にはアメリカ宣教のために自らアメリカに移住された。 

 

さて、会堂完成以降、チョー牧師の教会は急成長し、1979年10万名、1981年20万名、1984年40万名(48才)、2006年には78万名に達した(70才)。こうして世界最大のキリスト教会に成長し、ギネスブックに登録されるまでになった。2021年9月14日、ソウル大学病院にて永眠(85才)。 (Wikipedia)

 

なおチョー牧師には、前記した結核の癒しや全身麻痺の子供の癒しの他、「傷んだ足が長くなる奇跡」を著書『4次元の人-3次元の人生を支配する』の中で証言し、以下の通り奇跡的な癒しを目撃している。 

 

即ち、アメリカのフラー神学大学院でチョー牧師を講師に依頼したピーター・ワーグナー教授は、自分のオフィスで人の足が長くなる奇跡を見せ、チョー牧師はこれを目撃した。何と、列車事故で足の一部が切断されたイラク人の足を、祈りによって長くしたのである。ワーグナー教授は5分以上の真剣な祈りと、イラク人に「神のひとり子、救い主イエスが、必ず癒して下さることを信じます」という信仰告白させた上で、「ナザレの主イエスの御名によって命じる。足よ、長くなれ!」と宣言した。するとチョー牧師の目の前で奇跡は起こり、当のイラク人は感激してオフィスの中を歩き回ったというのである(チョー・ヨンギ著『 4次元の人-3次元の人生を支配する』トランスフォーメーション・グロース小牧者出版P23~24)。 

 

こうしてこれらの病気の癒しの体験は、チョー牧師の教会成長の鍵になり伝統になって、いわゆる「三拍子の福音」の一つを構成する。三拍子の福音とは、①霊が恵まれる祝福(霊魂の救い)、②すべてに恵まれる祝福(富や事業の成功など)、③健康になる祝福(体の癒し)、である。 

 

またチョー牧師の教会は、ほかに「国民日報」、「ハンセ大学」、「エリム福祉タウン」、「良い人々」(NGO)などの機関・団体を設立し、宣教と教育、福祉と救済ミニストリーなどを行っている。 



 

<世界宣教> 

 

さて、1976年にチョー牧師が設立した「国際教会成長協会」は世界宣教にも熱心であり、世界伝道の指導者養成機関として韓世大学校(1986年設立)も運営している。チョー牧師は1992年から2008年まで「世界アッセンブリー連盟」(WAF)の議長を務め、第3世界宣教に拍車を掛けた。アフリカ、アジア、南米などで大規模な聖会を導き、大きな聖霊運動が起き、パラグアイ、ブラジル、ウズベキスタンにそれぞれ数千名の3千人の信徒がいる。 

 

旧ソ連崩壊後の1992年6月にはモスクワで聖会を開催し、1997年にブラジルのサンパウロで開いた聖会には150万人が殺到し、両国のプロテスタント史上最大の集会規模を記録した。1975年から2019年までの44年間に、71カ国で少なくとも370回のリバイバル聖会を開催し、飛行機での移動距離は、地球120周分にも及んだ。当時、世界で成長している教会の多くがヨイド純福音教会の影響を受けたと言っても過言ではないという。 

 

チョー牧師は、500名の世界宣教師派遣を目標に掲げたが、現在約300人の宣教師を世界に派遣しているという。これ自体は他のキリスト教会が追随できない規模の派遣であるが、文先生は日本宣教師を中核に数千名規模の世界宣教師を派遣している。 

 

<日本宣教> 

 

そして、チョー牧師は、日本による韓国統治のトラウマから、あれほど忌避し、嫌っていた日本の宣教に本格的に乗り出していく。 

 

チョー牧師によれば、あるとき神に「日本へ行け」といわれたが、日本統治時代には「吉田」姓を強制された経験もあり、当時日本が大嫌いだった。「アメリカ、ヨーロッパにやるべきことが沢山あります」と必死に抵抗するも、断固日本へ行けと命じられたため、不本意ながらも日本へと渡り、伝道することにしたという。しかし来日後に日本宣教への思いを燃やし始め、「日本一千万救霊運動」 (このヴィジョンは1977年に神から示されたという)を展開し、話せなかった日本語を必死で学び、日本のために日々泣きながら祈ったという。 

 

1980年7月6日からは近畿テレビ、他全国ネットで「幸福への招待」というタイトルでチョー牧師の番組が放映され、『日本一千万救霊運動』にますます拍車がかかるようになった。以降は頻繁に来日し、番組とリンクさせたものを含めた聖会、祈りの訓練セミナー、訪韓ツアーなどを多数開催した。なお番組は1998年に終了した。 

 

筆者はこの2月2日(日)、新宿にある「純福音東京教会」(1977年設立)の第2礼拝に参加した。礼拝参加者は約40人くらいだったが、代表牧師である志垣重政牧師の「主にあっていつも喜びなさい」から始まるピリピ4章4節~9節を引用したコンパクトで力強い説教を聞いた。礼拝後、担当伝道師から色々話を聞く機会があった。伝道師の話しによれば、教会には3大ビジョンと3大目標があるという。 

 

ちなみに3大ビジョンとは、①聖霊に満たされる教会、②御言葉と賛美と祈りに満ち溢れる教会、③愛を実践する教会であり、3大目標とは、①家族の救いと家庭礼拝の実践、②地域と区域礼拝の実践、③100個教会設立、である。この内的ビジョンと外的目標のもとに、全国で布教活動を行っているが、全国で教会は約50箇所くらい設立され、信徒は約1万人くらいだという。また、信者の70%は在日韓国人ないしは日本に来訪した韓国人が占めるという。 

 

しかし前述したように、既に文先生は、1958年に日本に宣教師を派遣し、1970年代には日本で確固たる基盤を作られている。現在日本には約300箇所の教会があり、50万人以上の信徒を抱え、日本の社会への影響や浸透は純福音教会を圧倒している。筆者は、チョー牧師の日本宣教には、「怨讐を愛せ」という文先生の影響や対抗意識があると考えるが、これは筆者の独りよがりだろうか。 

 

<ロシア聖会> 

 

ソ連崩壊の1年後、チョー牧師はロシアを訪問し、1992年6月16日から、ロシアで3日間の聖会を開催した。ロシア正教会の組織的妨害が懸念されたため、KGB秘密警察の警戒の元、クレムリン宮殿で行われた。チョー牧師は説教の中で、共産主義、無神論をはげしく非難したという。 

 

そしてチョー牧師の話を聴くために、3万名以上の群集が宮殿横の公園に集まり、チョー牧師は危険を省みず、逮捕を覚悟で公園で説教を行った。この聖会は3日間で延べ4万人以上動員し、多くの人が新たに信仰を持ったというのである。 

 

この点、既に文先生は1990年4月11日、ソ連のゴルバチョフ大統領とクレムリンで会見し、「神主義」を提言された。また第11回世界言論人会議モスクワ大会(1990年4月10日~13日)では基調講演をし、講演の中で「神主義による良心革命」を提示した。文先生は、10年以上前から「共産主義は70年を越えることは出来ない」と預言され、1985年のジュネーブでのアカデミー国際会議では、そのテーマを「ソビエト帝国の崩壊」とするよう強く指示されたのである。 従って、チョー牧師のロシアでの聖会は、文先生のロシアでの宣教活動に刺激されたと思わざるを得ないものがある。 

 

以上、チョー・ヨンギ牧師の略歴・信仰体験・業績を見て来たが、まさに外面から見れば文先生と並ぶ韓国が生んだ宗教指導者である。なおチョー牧師は、幾つかのスキャンダルを抱えている。一つは、汝矣島純福音教会に約157億ウォン相当の損害を与えた背任の疑いなどで告発・起訴され、懲役3年、執行猶予5年、罰金50億ウォンの判決を受けた

(2013年6月8日)。また共謀容疑で共に起訴されていた長男の趙希竣(チョー・ヒジュン)前国民日報会長(52才)も、懲役2年6月、執行猶予4年が確定した。そしてもう一つのスキャンダルが「パリの蝶夫人」ことチョンブさんと、チョー牧師との不倫疑惑である。また長男もある女優との女性問題を起こしているという。 

 

【純福音神学について】 

 

さて、前記の通り純福音教会は韓国で最大の教勢を誇り、世界的にも基盤を作り、文字通りメガチャーチと成長した。では、チョー牧師の神学、この教団の運営理念は何だろうか。 

 

チョー牧師の神学、純福音教団の理念を象徴するキーワードは、「五重の福音」「三拍子の祝福」「四次元の霊性」である。これらチョー牧師独特の端的な考え方がイエス・キリストの福音という土台の上に打ち立てられ、それを聖霊の働きが支えている。 

 

<五重の福音> 

 

「五重の福音」とは、「新生」「聖霊充満」「癒し」「祝福」「再臨」という聖書の主要な五つのテーマである。信仰生活のはじめからその結果までの全過程を説明している核心的テーマであり、純福音教団の基本教理としている。 

 

「新生」とは、五重の福音の基礎をなすもので、人間が、罪とサタンから解放されるための救いの福音である。 即ち、イエスの十字架の血潮により贖われたことを信じ、イエスをキリストとして受け入れるだけで、罪がゆるされ、サタンから解放され、 神の子として新しく生まれ変わることができるという教理である。また「聖霊充満」とは、新生により聖霊に満たされるとき、喜びと感謝に満たされ、罪悪から離れてきよい生活を送ることができるようになって、福音を宣べ伝える力が与えられるというものである。 

 

「癒し」とは、イエス・キリストにより、霊魂が守られ、身体と心の病が癒されるというものである。病のいやしはイエス・キリストの働きであり、神が人間に与えた大いなる恵みである。信仰を持って祈りをささげ、み言葉に従うとき、奇跡的な癒しの御業が起こるという。また「祝福」とは、イエス・キリストが十字架にかけられたことにより、人に課せられていた呪いのくびきが断ち切られ、神の子どもとしての祝福が「人生のすべてに渡って」臨むようになるというものである。即ち、イエスを信じた者には数々の祝福(三拍子の祝福)が与えられるという。 

 

そして「再臨」とは、文字通りイエス・キリストが再び来られるということである。それは、きよく整えられたキリストの花嫁を出迎えて、天の御国に引き上げるという約束を成就するためである。 イエス・キリストの再臨は、神のいつくしみ深い計画であり、イエス・キリストの誠実な約束であり、聖書がはっきりと見せている未来史であるという。 

 

<三拍子の祝福> 

 

「三拍子の祝福」(三重の祝福)は、前記の「五重の福音」を、より具体的に実際の生活領域に適用するもので、3ヨハネの手紙1章2節の「愛する者よ。あなたのたましいがいつも恵まれていると同じく、あなたがすべてのことに恵まれ、またすこやかであるようにと、わたしは祈っている」を根拠としている。これを人間の霊、肉、生活全領域における三拍子の祝福(三重の祝福)と呼ぶ。即ち、霊が恵まれる祝福(霊魂の救い)、すべてに恵まれる祝福(富や事業の成功など)、健康になる祝福(体の癒し)、である。 

 

この教えは、朝鮮戦争直後の貧しかった時代に、物質的にも祝福されるという点を強調し、教会に爆発的な成長をもたらした。チョー牧師は、「貧しい村で牧会を始め、貧困と絶望に陥った信徒たちに希望のメッセージを与えることが私の牧会の始まりでした」という趣旨の説教をしている。 

 

しかし後述するように、韓国戦争後、経済的に厳しかった時期にイエスを信じれば霊魂救援だけでなく物質祝福と健康祝福まで受けるという「三重祝福論」は、しばしば希福信仰(ご利益信仰)という批判を受け、異端論争において「繁栄の神学」と揶揄された。 

 

<四次元の霊性> 

 

チョー牧師は1981年、著書『第四次元』(幸福への招待発行)を著した(45才)。そこに書かれた信仰の奥義は、20年以上の苦闘、断食、徹夜の祈り等を通して、神に忠実に従う中、神ご自身から啓示されたと言われ、それは「見えるものは目にみえるものでできたのではない」(ヘブル11.3)、「あなたの信仰の通りになれ」(マタイ9.29)という聖書の奥義である。 

 

そして特に近年になって、神は祈祷室にいるチョー牧師に、一日に一時間以上絶えず啓示を与えられて魂を揺り動かされたという。それを他の人々と分かち合いたいと切実に思い、新たに2006年に『 4次元の人-3次元の人生を支配する』を著した。  大川従道牧師は推薦文の中で、「この書はチョー牧師の真骨頂と言える大作である」と絶賛した。 

 

チョー牧師は著書の中で、人間の生は時空の制限の中で生きる三次元の人生であるが、「見えるものは目にみえるものでできたのではない」(ヘブル11.3)とある通り、四次元は宗教的に言うと「霊的世界」であり、人間は霊魂を持った存在なので、三次元の世界にいながら四次元に属している存在であると述べている(P3)。そして四次元を変えられる人が三次元を支配するようなるので、四次元の霊性を如何に動かすか(変えるか)が問題になるとし、それが「考え」「信仰」「夢」「言葉」という四つの要素であるとした(P38)。 

 

チョー牧師は、ポジティブな考えを持ち、夢を持って信ずる者には、「どんな事でもできる」(マルコ9.23) という。ピリピ4章13節にも「私を強くして下さる方によって、どんなことでもできる」とある通りである。そして「必ずできる」と信じて告白し、イエスのみ名によって「病よ、退け」「悪霊よ、出ていけ」「貧しさよ、退け」と大胆に口で宣言することであるとした(P179)。即ち、しっかりした目標と夢をもち、信じて口で肯定的告白をするならば、夢、つまり四次元の世界にあるものを三次元の現実世界に実現化させることができると説く。 

 

しかし、この四次元の信仰に対して「自己実現」セオリーの焼き直しに過ぎないとする批判がある。即ち、物事を前向きに捉え、プラス思考のアプローチをし、何でも肯定的に物事を考えれば、それは実現し、人生はうまくいくという「ポジティブシンキング」である。確かに大和カルバリチャペルの大川牧師は、説教のなかで「マイナスは必ずプラスになる」というフレーズを繰り返し使っている。 

 

このポジティブシンキング(積極思考)は、19世紀半ばにアメリカで起こったキリスト教の異端的潮流ニューソートに始まると言われている。ニューソートは「健康と幸福と繁栄」をテーマとする思想で、日本でも広く支持されている。つまり、心や思考の性向が健康や経済状態として表れ、思いは物理的現実になるという考え方で、ニューエイジ、精神世界、スピリチュアル、自己啓発セミナーにも取り入れられ、現代の成功哲学やビジネス本、自己啓発本にも取り入れられている。そういえばトランプ大統領もポジティブシンキングの信奉者である。 

 

【チョー牧師と文鮮明先生】 

 

おしまいに、チョー・ヨンギ牧師が如何にして世界最大の教会を作り得たのか、そしてチョー牧師と文鮮明先生との「違い」は何か、を考察したい。 

 

では、何故チョー牧師の教会は世界最大の教会に発展したのだろうか。前述したように、その原点にはチョー牧師自身の「病気の癒し」という信仰体験がある。そして祈りを重視し(通声祈祷)、分かりやすい教理(五重の福音・三拍子の祝福)を示し、現世的な救い(富や健康)を大胆に語るところに教会発展の秘訣があると思われる。またよきパートナー(チェ・ジャシル女史)との出会いに象徴されるチョー牧師自身の幸運がある。 

 

そして何よりも大きいのが、当時の貧しく混乱した韓国の時代背景と現世利益とも見える韓国キリスト教会の特徴がある。筆者は、「つれづれ日誌(令和4年1月5日)-朝鮮半島におけるキリスト教③」において「何故韓国はキリスト教国家なったか」を論じたが、1960年~1990年における韓国キリストの激増には目を見張るものがあり、チョー牧師の教団はこの時代背景に最も恩恵を受けたと言えるだろう。 

 

そして韓国のプロテスタントは、キリスト教が一般的に忌避するシャーマニズムの神秘主義を大胆に取り入れ、これが韓国の風土と合致し、教会の急成長をもたらしたと言われる。この巫俗シャーマニズムは現世利益的な傾向を持ち、韓国の牧師は現世利益をはばからず、そのために祈った。これを「祈福信仰」といい、人々はシャーマンのところに行く代わりに牧師のところに行くというのであり、特に数万から数十万の信徒を有するメガチャーチでは、病気の癒し、貧乏からの解放、ビジネスの成功、即ち「貧・病・争」の解決を唱えた。まさにチョー牧師率いる汝矣島(ヨイド)純福音教会は、これを地でいったのである。こうしてチョー牧師の純福音教会は、シャーマニズムの現世利益とポジティブシンキング思考を自らの教理に取り込んで、教会成長の糧とした。

 

以上の通り、現代韓国が生んだ卓越した宗教指導者であるチョー・ヨンギ牧師であるが、同じ韓国人であり世界的な宗教指導者である文鮮明先生との違いは何だろうか。今回、その違いを取り敢えず3つ指摘しておく。 

 

第一は、メガチャーチの「創立者」と世界宗教の「教祖」の違いである。チョー牧師はメガチャーチの代表牧師であるが宗教の教祖ではない。あくまでも、ジョン・ウェスレーやビリーグラハムと同様、世界的なバイバリストであり、キリスト教の教祖ではない。しかし文先生は自らが再臨のキリストであることを宣言し、数々の根拠を示して、これを立証した。つまり、チョー牧師と文先生の違いは、洗礼ヨハネとイエス・キリストの違いと同じである。 

 

第二は、文先生は、聖書の奥義を解明した新しい神学教義を確立し、これを原理として発表したが、チョー牧師は聖書が示す重要教理を、自らの信仰的確信に基づいていくつかを選択して教会標語としたに過ぎない。 

 

そして第三は、チョー牧師の福音宣教は韓国では根を張り、第三世界ではそれなりの布教ができたものの、国際社会の動向に影響を与えたわけではない。一方、文先生の世界的福音宣教は、世界、特に日本とアメリカに根を張っただけでなく、宗教、政治、経済、言論、文化などを含む総合的な神の国建設の理念とビジョンを提示し、そして具体的な雛型を示した。そうして無神論的なソ連共産主義を終焉させるための決定的役割を果たしたのである。 

 

以上、チョー・ヨンギ牧師の足跡や福音宣教の理念や業績を概観し、これを文鮮明先生との対比を意識して論評した。いずれにしても、チョー牧師は韓国が生んだ代表的宗教指導者であることは言うまでもなく、チョー牧師の福音宣教と教会運営の在り方は、今後の私たちの伝道と教会運営の在り方に大いに参考になるはずである。そして、聖書に根差したポジティブシンキングが、如何に奇跡的な力を発揮するかを改めて認識させらたものである。願わくば、既に霊界に旅立ったチョー牧師が、霊界におられる再臨主と劇的な出会いをして、まさに四次元の世界から三次元の地上世界に熱い協助の霊を注がれんことを祈念する。(了)          

牧師・宣教師 吉田宏

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​新生聖書勉強会

​ユニバーサル福音教会牧師
​家庭連合ポーランド宣教師
   吉田 宏

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