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恩讐を越えて 石破首相誕生に思う

◯徒然日誌(令和6年10月9日)  恩讐を越えてー石破首相誕生に思う 

 

しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。(マタイ5.44)

 

プロローグ 

 

先般、東京プリンスホテルで「鈴木宗男を励ます集会」が行われ、そこで作家の佐藤優氏が講演を行った。その講演の中で石破茂氏について、マスコミでは語られることのない「宗教」というキーワード、即ち、石破氏がキリスト教徒であるという視点からの解説があった。筆者も前回10月2日の徒然日誌で、石破氏が篤実なクリスチャンであることを強調し、この点が石破氏を理解するキーワードであると述べたが、まさに佐藤氏と同じ見解であり、流石に神学者佐藤優である。 

 

佐藤氏は、石破氏が熊本バンド出身の曾祖父金森通倫の信仰を引くカルバン派のクリスチャンであることを述べた。そして石破氏は、自分が首相になったことを「神の召命」であると受けとめ、「神のご用に役立ちたい」として、首相に召された意味(使命)を祈り求めているだろうと語った。またアメリカのトランプも福音派のクリスチャンであり、共通の信仰を共有していることで、話が合うことがあるのではないかとも述べた。 

 

なお、石破氏にはクリスチャンでありながら美人秘書との不倫や北朝鮮のハニートラップの噂もあるが、しかし、石破氏は愛妻家であり、この真偽のほどは分からない。 

 

【石破茂と安倍晋三の確執】 

 

さて、石破茂氏と安倍晋三氏は、互いに最大の政敵であり、まさに恩讐関係であった。安倍氏も「石破氏だけは首相にしてはいけない」と語っていたという。 

 

今回の石破内閣で、安倍氏を「国賊」と呼んだ村上誠一郎氏を、あえて総務大臣に指名した人事や、旧安倍派からの閣僚がゼロだったことに、石破氏の安倍氏への怨念の深さが見て取れる。この人事はまさに「反安倍内閣」、「安倍派潰し」の象徴であり、ジャーナリストの田崎史郎氏は、「よっぽど安倍さんに対する恨み辛みがあったのかな。この12年間のうっぷんを晴らす象徴のようだ」と語った。果たして霊界の安倍晋三氏は、この状況をどのような心情で見ているのだろうか。 

 

怨念の発端は2012年の自民党総裁選挙に遡る。9月26日に実施された投開票では、石破氏は1回目の投票で1位の199票(党員票165票、国会議員票34票)を獲得し、特に党員票では2位の安倍氏の87票(議員票57票)を大きく引き離した。しかし、国会議員のみによる2回目の投票では、89票を獲得するも、108票を獲得した安倍氏に逆転され敗れた。国会議員から敬遠されていた石破氏は決戦投票の議員票で安倍氏に破れたのである。 

 

一方、今回の総裁選挙では一次投票では高市早苗氏が一位、石破茂氏が二位だったが、決戦投票で石破氏が逆転勝利した。まさに2012年の総裁選挙のリベンジを見るようである。 

 

<裏切り者というレッテル> 

 

それにしても石破氏は、国民には人気があったが国会議員には人気がなかった。では何故石破氏は議員に敬遠されたのであろうか、その理由は過去の石破氏の言動にある。つまり、「自民党離党の過去」「派閥結成の経緯」「後ろから鉄砲を撃つような言動」「安倍氏との確執」が影響しているようである。 

 

まず、露骨に「倒閣」に動いた過去が大きい。石破氏は1993年、宮沢喜一内閣の不信任案に賛成して離党し、「政界の壊し屋」こと小沢一郎衆院議員と行動をともにした。このため、党内には、「党が苦しい時に出ていった裏切り者」との声が根強いのである。また復党後の2009年には、麻生太郎内閣の農水相でありながら、与謝野馨元財務相と官邸に乗り込み、麻生氏に退陣を迫った。寝首をかきに来た石破氏に、麻生氏はいまも不信感を募らせているという。 

 

次に言行不一致も指摘される。安倍内閣の幹事長時代、「派閥政治を解消する」と言いながら、2015年には自らの派閥を立ち上げて、党内であきれられた。今回の石破政権でも、朝令暮改の如く前言を翻し、国会論戦を経ずして10月27日投開票の早期解散総選挙に踏み切った。 

 

また2019年、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた背景について、「日本が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが問題の根底にある」と発言して、韓国のGSOMIA破棄に理解を示した。この発言は党内で疑問視されただけでなく、ネット上ではソウルの慰安婦像の前で跪いて侘びた「鳩山由紀夫元首相とソックリだ」などと批判された。実は、石破氏の「日本の戦争責任」という歴史認識は、戦後の「日本基督教団」の歴史認識でもあり、石破氏は日本基督教団から信仰的な影響を受けていると考えられる。 

 

戦後日本基督教団はかなり左傾化したが、その理由の一つは、戦前の侵略戦争に加担したという負い目から、大東亜戦争を「日本国家によるアジア・太平洋地域への侵略戦争」と規定したのである。なお、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は今回の自民党総裁選挙の行方を固唾を飲んで見守り、石破総裁に決まったことに安堵感が広がったと言われている。尹錫悦大統領は、ソウル大学時代、原理に触れて共感したと言われており、宗教という土俵でも石破氏とは通じるかも知れない。 

 

更に安倍政権の「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設」の方針に、「これしかない、とにかく進めるということだけが解決策だとは思わない」と疑義を呈して、左派野党やメディアと重なる発言内容が自民党主流派との距離を広げた。 

 

<安倍晋三との確執>

 

石破氏にとって安倍氏は、自民党総裁選挙で、2012年と2018年8月の2度にわたって争った最大のライバルである。(いずれも安倍氏の勝利)

 

若い頃には互いを認め合っていた2人だが、距離ができ始めたのは、第1次安倍政権下、2007年の参議院選挙で自民党が大敗し、安倍氏が続投の方針を表明した時だという。石破氏は党の総務会で、「選挙に負けたにも関わらず、続投するのは理屈が通らない」と公然と安倍氏の辞任を求めたのである。安倍氏にとっては、最も言われたくないことであり、その時から、「こいつは許せない」との感情が芽生えたと言われている。 

 

そして2012年の総裁選挙での確執である。前記したように、石破氏は党員票ではダブルスコアで安倍氏に勝ったものの、決戦投票の議員票で安倍氏に敗北した。石破氏には自分の方が国民から支持されているという自負があったはずである。そして安倍政権のもとで石破氏は自民党幹事長に就任したが、石破氏は次のように述懐した。 

 

「心ならずも、私を幹事長にしたんでしょう。そして選挙に勝って民主党から政権を奪還をした。本当はそこで私を変えたかったはずです。ただ、選挙で勝った幹事長を変えられないから、2年やることになった」 

 

そして決定的な対立となったのは、2014年の内閣改造の時である。翌年の国会で、集団的自衛権の限定的な行使を可能にするための「安全保障法制の整備」を目指していた安倍氏は、石破氏に担当大臣の就任を要請した。しかし石破氏は、憲法と集団的自衛権の関係をめぐり、方向性が違うと考えていたので、この要請を拒否したのである。 

 

石破氏曰く、「総理執務室で安倍さんと私と1対1だった。『大臣を受けろ』『受けない』という押し問答があってね。『閣内不一致になるから担当大臣は受けられません』って言ったら、安倍さんの激怒が頂点に達するわけね。『そんなんだったら、あなたが総理になったらやればいい』と。捨てゼリフだったね」と。(以上、2022年8月15日NHK特集記事)

 

結局石破氏は、地方創生担当大臣に就任するが、2016年には閣外に去り、「ポスト安倍」を目指す活動を進めた。そして、2018年8月の総裁選挙で、再度安倍氏と一騎打ちで争った末、再び敗れたのである。以後、石破氏は完全に党内野党として安倍政権を批判することになる。 

 

2020年9月1日には、安倍氏の任期途中の辞任に伴う自民党総裁選挙で、4度目の出馬に挑戦したが、菅義偉氏、岸田文雄氏に次ぐ最下位で敗れた。10月22日、総裁選敗北の責任を取り派閥の水月会会長を辞任した。こうして石破氏は、党内野党として、冷や飯の時代を過ごすことになった。 

 

【恩讐を越えよー許せ、愛せ、団結せよ】 

 

前記で見てきたように、石破氏は議員から敬遠され、安倍氏とは恩讐関係にあった。そして党内基盤も石破氏を支える派閥もなく、石破政権の前途は多難であり、早くも短期政権が囁やかれている。しかし、今回導かれて奇跡的に首相になって、苦節12年、さぞや感慨深いものがあり、そして神の恩寵を感じたに違いない。だからこそ今、キリスト教徒としての矜持を発揮し、「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」(マタイ5.44)とのキリストの言葉を想起すべき時が来た。 

 

<安倍氏逝く>

 

それは2022年7月8日午後11時半ころ、奈良市の大和西大寺駅前のことであった。安倍晋三氏は暗殺されたのである。衝撃は全世界を駆け巡り、奈良警察のリークで暗殺の矛先は我がUCに向かい、その後UCは冤罪を背負わされ、マスコミと世論と岸田政権から袋叩きにされた。イエス・キリストと同様、UCもまた十字架の道を余儀なくされたのである。 

 

さてこの暗殺は、石破茂氏にどう写ったのであろうか。つまり、石破氏にとって天敵が突然いなくなったのである。その後の政局を考えた場合、もし安倍氏が健在であれば、今回の総裁選挙は間違いなく高市早苗氏が勝っていたはずであり、石破総裁も石破首相も石破内閣も存在しなかった。計らずも安倍氏の死は、石破氏にとってまさに天祐であり、誤解を恐れずに申せば、山上哲也被告は石破氏にとって、内心英雄に見えたかも知れない。 

 

今まで筆者は、安倍氏の死は「贖罪の羊」であることを繰り返し述べてきたが、石破氏にとって、あるいは日本の政治にとって、「和解の供え物」であると筆者は思う。そしてクリスチャン石破氏なら、この霊的意味が分かるはずである。安倍氏は、既に代価を払って地上を去った以上、この犠牲をもって石破氏は安倍氏との怨念を清算すべきであり、そして石破氏と高市氏は和解すべきである。かってカインがアベルを殺害した(創世記4.8)失敗を繰り返すのではなく、かってエソウとヤコブが和解したように、石破氏と安倍氏、石破氏と高市氏は、それぞれエソウとヤコブの立場から和解し一つになるべきである。聖書に「するとエサウは走ってきて迎え、彼を抱き、そのくびをかかえて口づけし、共に泣いた」(創世記33.4)とある通りである。 

 

 <日本復活の方案>

 

かって石破氏は、クリスチャンの集会で、「自らが足らざる者、罪人であることを認め、心から神様に赦しをこうことができること、これが信仰の一番素晴らしいことだと理解している」と語り、「塵芥(ちりあくた)のような私でも御用のためにお用いくださいと祈ることを忘れてはならないと思っている」と述べた。ならばこの際、この祈り、この信仰を発揮し、安倍派へ敵愾心を燃やすのではなく、日本を代表して歴史的な悔い改めと和解を決断すればどうだろうか。 

 

石破氏は今回の自民党総裁選挙で、奇跡的に高市氏を制したが、いみじくも佐藤優氏が「神の召命」と述べたように、石破氏はクリスチャンとして、今回首相になった霊的意味を真摯に祈り求めることをお勧めする。石破氏は、今回、岸田派や菅氏などリベラル保守派(宏池会)の支持を受けて総裁に選任されたが、高市氏を代表とする麻生氏など右派保守派(清和会)の存在を無視することは出来ない。この2つの潮流は、エソウとヤコブの和解のように、あるいはヘレニズムとヘブライズムの統合のように、葛藤の末、一つになることが望ましく、それこそが日本が復活する道である。文鮮明先生もニクソンのウォーターゲート事件に際し、「許せ、愛せ、団結せよ」とアメリカ国民に訴えられた。

 

従って筆者は、高市氏が石破政権を一定期間支えた末、石破氏は高市氏に政権を禅譲すべきであると思料する。これが、石破氏と安倍氏の和解の道であり、日本再生の最良の方案であると筆者は考える。そして、これが聖書的処方箋である。むろん政治の世界は権謀術数がはびこり、生き馬の目を抜く修羅場の世界であるが、ここに信仰という縦軸を打ち込むことによって、歴史的な和解は可能になると確信するが、これは筆者の妄想なのだろうか。(了)   

牧師・宣教師  吉田宏

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